産業用蓄電池の導入でエネルギー利用を効率化!導入手順や注意点を紹介
産業用蓄電池は大容量で、災害時のバックアップや電気代削減に貢献し、再生可能エネルギーの安定供給を支援します。家庭用蓄電池は小容量で家庭向けです。産業用は長寿命で高性能、UPSやCVCFが必要な場合も。導入には高コストとメンテナンスが伴いますが、災害時の電力供給やピーク時の電気代削減に役立ちます。
目次
産業用蓄電池と家庭用蓄電池とは何が違う?
産業用蓄電池は、大型施設向けに設置される高容量の蓄電システムで、停電時のバックアップや電気代の削減に貢献します。
◇産業用蓄電池とは
産業用蓄電池は、オフィスビルやショッピングモール、工場などの大型施設に設置される蓄電システムです。主な用途は、自然災害による停電時のバックアップ電源ですが、平常時でも太陽光発電と連携することで電気代の削減が可能です。
蓄電池を使えば、昼間に発電した余剰電力を蓄えて夜間や悪天候時に使用でき、エネルギーを効率的に管理できるため、経済効果が期待できます。
◇家庭用蓄電池との違い
家庭用蓄電池と産業用蓄電池の明確な定義はありませんが、主な違いは蓄電池の容量にあります。家庭用蓄電池の容量は一般的に17kWh以下で、これは規制対象外となるためです。消防法では、リチウム電池の定格容量が4,800Ah以下(約17kWh以下)であれば規制を受けません。一方、17kWhを超える蓄電池には、安全規制や所轄消防署への設置届の提出が必要です。
産業用蓄電池は大容量で寿命が長く、放電・充電を8000回以上繰り返しても使用可能な高性能タイプもあります。一般的な蓄電容量は10~20kWhですが、近年では60kWh以上の大容量モデルも登場しています。また、産業用蓄電池では状況に応じてUPSやCVCFの設置が必要です。
UPSは停電時に瞬時に電源を切り替え、パソコンやサーバーのデータ損失を防ぎますが、一部の電子機器には不調を引き起こす場合があります。その場合、安定的に電源を供給するCVCF搭載の電源装置が適しています。産業用蓄電池は機器の稼働要件や付帯機能によってコストが増え、家庭用蓄電池の数倍の費用がかかることもあります。
再生可能エネルギーの課題!蓄電池の利用で解決できる?
画像出典:フォトAC
再生可能エネルギーは環境負荷の低減と持続可能な社会実現に重要で、蓄電池がその効率的な活用に貢献します。
◇再生可能エネルギーの課題
再生可能エネルギーと蓄電池の関係を理解するには、まず「同時同量の原則」を知ることが重要です。電力業界では、発電された電気の量と消費される電気の量が常に一致していることが求められます。これにより、電気の品質が維持され、需要と供給のバランスが保たれます。もし、このバ
ランスが崩れると、停電が発生する可能性があり、したがって、同時同量の原則を守ることは、個人や法人にとっても非常に重要です。
太陽光発電は天候に依存しており、曇りや雨、雪の日には発電量がほぼゼロになる一方、日差しが強い日には過剰に発電されることがあります。この供給の不安定さは、同時同量の原則を維持するために大きな問題となります。
再生可能エネルギー単独ではこのバランスを保つことは難しく、そこで、蓄電池は供給の不安定さを補う重要な解決策として注目されています。
◇蓄電池が課題解決に繋がる
1859年にフランスの科学者ガストン・プランテによって発明された鉛蓄電池は、160年以上の歴史を持つ重要な技術であり、現代の生活に欠かせないものとなっています。
スマートフォンや自動車など、さまざまな生活必需品に使用され、今後もさらに多くの分野で活躍が期待されています。再生可能エネルギーの課題である「自然変動性」に対して、蓄電池は重要な解決策となります。
蓄電池の役割は大きく分けて、「電気を蓄える」、「電気を供給する」、の2つです。晴れた日には、発電量が需要を超える余剰電力を蓄電池に蓄え、曇りや雨の日、夜間にはその蓄えられた電力を供給できます。これにより、再生可能エネルギーの供給の不安定さが解消され、効率的にエネルギーを利用することが可能になります。
産業用蓄電池の導入手順と注意点
産業用蓄電池の導入は、現地調査から設置、動作確認までの手順を経て行います。
◇導入の手順
産業用蓄電池の導入には、まず施工業者立ち会いのもとで現地調査を行い、設置場所が適切であるか確認します。つぎに、蓄電池は重量があるため、安定した設置場所を確保するためにコンクリート基礎を打設します。
基礎工事には1~2日かかり、浸水防止のために高さを確保する必要があり、屋内設置の場合は補強工事が求められることもあります。基礎工事が完了したら、蓄電池本体を組み立て、アンカーボルトでコンクリート基礎に固定します。
その後、パワーコンディショナや分電盤など周辺機器を設置し、配線工事を行います。太陽光発電があれば、発電用と蓄電池用のパワーコンディショナを接続し、HEMSがあれば通信ユニットも接続します。配線後、モード設定や充電電力設定を行い、設定内容を確認した後、動作確認をして作業が完了です。
◇導入時の注意点
企業用の蓄電池(17kWh以上)は、容量に応じて数百万円から数千万円のコストがかかり、初期費用やメンテナンス、部品交換のコストが高いことが注意点です。また、設置スペースを広く、メンテナンスや搬入のためのスペース確保しなければいけません。
さらに、リチウムイオン蓄電池は放熱対策が求められ、安全な温度管理が不可欠です。蓄電池は充放電を繰り返すことで稼働しますが、容量が徐々に減少し、寿命は10年から15年程度となるため、定期的な点検やメンテナンスが重要となります。
産業用蓄電池の導入による利点
産業用蓄電池は、災害時の非常用電源としての役割を果たし、再生可能エネルギーの活用やコスト削減にも貢献します。
◇災害時の非常用電源となる
産業用蓄電池が重要とされる理由の一つは、災害時の非常用電源としての役割です。大規模な自然災害で電力供給網が遮断された場合でも、産業用蓄電池は病院や重要施設、避難所に継続的に電力を供給できます。これにより、地域社会の安全と機能維持が支えられます。さらに、電力復旧までの間、重要業務や救命措置を継続するための安定したエネルギー源として、産業用蓄電池は不可欠な存在です。
◇自給自足の電力供給とCO2の削減
産業用蓄電池は、自給自足の電力供給を実現し、企業や施設が再生可能エネルギーを最大限に活用できるようにします。
太陽光発電などの再生可能エネルギーは天候に左右され、発電量が不安定ですが、産業用蓄電池を活用することで、これらのエネルギーを蓄え、必要な時に安定的に供給することが可能です。
これにより、石油や天然ガスなどの化石燃料への依存を減らし、CO2排出量を削減することで環境保護にも貢献します。
また、エネルギー供給の安定化はエネルギーコストの削減にもつながり、長期的には経済的な利益をもたらします。
◇電気代の削減とエネルギーの効率化
産業用蓄電池の導入は、電力コスト削減に大きく貢献します。特に、電力のピークタイムに高額な料金を支払う企業にとって、ピークシフトやピークカットにより電力使用を最適化できます。蓄電池を活用することで、高価なピーク時の電力を使用せず、安価に蓄えた電力を使用できるため、運用コストを大幅に削減し、電力供給の安定性も向上します。
また、電力の需給バランスを効率的に管理することで、エネルギーの無駄を減らし、運用コスト削減に繋がります。このシステムは企業のエネルギー管理を強化し、長期的に高いコストパフォーマンスを維持可能です。
産業用蓄電池と家庭用蓄電池の主な違いは、容量と用途にあります。産業用蓄電池は大型施設向けに高容量(10~60kWh以上)の蓄電システムで、災害時のバックアップや電気代の削減に貢献します。
一方、家庭用蓄電池は容量が小さく(17kWh以下)、主に家庭での使用を目的としています。産業用蓄電池は長寿命で高性能、数千回の充放電が可能で、UPSやCVCFといった機器が必要な場合もあります。
再生可能エネルギーの課題は「同時同量の原則」に基づく供給の不安定さであり、太陽光発電などは天候に依存し、発電量が大きく変動します。
これに対して、蓄電池は余剰電力を蓄えて、需要が高いときに供給することで、この問題を解決します。蓄電池は再生可能エネルギーの安定供給を実現し、CO2排出削減やエネルギー効率の向上に貢献します。
産業用蓄電池の導入には、現地調査やコンクリート基礎の設置、配線工事などが必要です。また、導入時には高額なコストや定期的なメンテナンスが必要となります。特にリチウムイオン蓄電池は放熱対策が求められ、温度管理が重要です。
災害時には、産業用蓄電池は病院や避難所に電力を供給し、重要な業務を支える役割を果たします。また、電力のピークシフトやピークカットにより、電気代を大幅に削減することができ、長期的な経済効果を得ることが可能です。